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2006.02.16 TAA/blog

マルチメディア工房

 岐阜の大垣にある国際情報科学芸術アカデミーのマルチメディア工房を訪れてきた。僕の事務所は名古屋にあるので大垣くらいなら近いはずなのだけど、車で行ったらすごい道の込み様で、しかも建物の近くまで来た所で道に迷ってしまい、結局片道2時間近くかかってしまった。

 前もってネットで建物の事を調べて見学が可能か電話で聞いた。私のような見学者も過去に多くいたのであろう、訪れる時間などを尋ねられた上でOKの返事をいただいた。対応はすごく丁寧な感じがした。

 この建物は建築学会賞を1998年に取っている。しかしその後、あまりいい評判を聞いていなかった。雨漏りがするとか使いにくいとか、あちこちで叩かれていたと思う。そんなに悪いものなのかな?写真で見る限り、そして図面を見る限りではとても魅力的なものに見えていたものだが。

 工房のあるそのアカデミーまで辿り着き、受付で自分の名前を言った。しばらくして中から男の人が出てきて私を導いてくれた。どうやら建物を案内してくれるらしい。なんて親切なんだろう。

 この国際情報科学芸術アカデミーという所は、名前からするとなんだかものすごい研究でもしそうな感じがするけれど、訪れてみたところで実際は芸術関係の学校という感じがした。あちこちに学生さんが作ったらしい作品を見かけた。

 そしてマルチメディア工房の前まで来た。建物は鍵がかけられているようだ。つまりは使われていないという事か?「今日は休みなんですか」と尋ねると、そうではなくて最近は卒業製作で学生が忙しくて別室でこもって作業を続けているのだと言う。なるほど、でもそんなものなのかな。

 前評判の通りで建物はけっこうサビがきたりしていた。「雨漏りするんですけどどこからなのかわからないんですよ」その男の人が言う。完成してから10年経っていないし海の近くでもないのにかなりサビかたはひどかった。あまりメンテナンスもされていないのだと思う。「床の板が、その雨漏りでダメになるんです」とも言っていた。床板はOSB(木のチップを固めて板にしたもの)になっている。確かに水には弱いだろうな。

 木工作業室みたいな所があった。空調の吹出しは床からになっている。「木のクズが詰まっちゃって掃除が大変なんです」そうかあ、なるほど。

 サロンと呼ばれる部屋があった。壁にビロードが貼られていて他とは異なる感じのする部屋だ。しかしながら今は完全に物置きになっているようだった。「もともとは休憩する部屋として考えられたんでしょうが、やはり外の景色が見える所がいいんでしょうね」なるほど、そこから外は見えない。この建物は全体のボリュームの半分が地面の下に埋まっている。そしてほとんどの部分が平家の状態になっているので外の景色は見えない仕組みだ。だからといって真っ暗な訳ではなくて、ちゃんと採光の事は考えてある。壁の大部分はFRP(樹脂の一種)になっているので光は透過してくるのだ。

 他にも部屋として使われていない、つまりは倉庫になってしまった所もあった。それでも使い手からすると仕方のない事なのかな。部屋自体の形も長細いと使いにくいという事はあるだろうなあ。

 建物は先にも書いたように屋上広場がある。というか屋根全体が屋上広場だ。階段を登ってそこに案内される。形は四角だけど、ちょっとすり鉢状態になっている。床は黒い。ところどころにガラスがはめ込まれている。ガラスと屋根面とでほとんど高低差がないのだけど雨漏りの原因はこのあたりにあるんじゃないかなあという気がした。そのガラス部分も歩けるようになっているのだけど表面はつるつる。当日は折しも雨で簡単に滑ってしまう。上を歩く時は手すりをしっかり握っていないとちと恐い。

 内部を一通り案内していただいた所で、なんだかずっとそのままというのも気の毒だったので一人で見てまわりたいと願い出た。「いいですよ」と言われてほっとした。男の人はすたすたと歩いていった。案内していただけたのはうれしかったのだけど途中一度も笑みもなく、出て来るのも不満ばかりで気分的には重苦しいものだった。

 雨降る中を外まわりを一周してみる。一番の特徴は屋根を支える鉄の垂木だろうか。全て鉄のプレートで出来ていて、しかもその形状からすると全て微妙に形が違うはずだ。

 外壁はほとんどがガラスで出来ていた。排煙用の窓があちこちにあったけれど枠がものすごく細い。かなりこだわり抜いている事がよくわかる。

 もう一度屋根に登った。吹き抜けている所があってそこを覗き込む。鉄部分はかなりサビサビ。設計者が悪いとか施主が悪いとかをここで言うつもりはない。ただこのままでは印象が悪いままだと思う。

 建物のはしっこの方の壁に建築学会賞のプレートが取り付けられているのを発見した。1998年妹島和世、西沢立衛。その時は誰が審査員だったんだろう。今のこの状態を見たら賞は出さないんじゃないかな。

 結局そこにいて、その日はさっきの男の人以外誰にも会う事はなかった。鍵がかけられているくらいだから当たり前か。でも休みの日でもないのに使われないって、そんなものなのかな。その建物を取り巻く人々の事はまったくわからないのだけど、マータイさんじゃないんだけどモッタイナイような気がした。お世辞を言うつもりはないけれど刺激があって面白い建物だと思う。使いにくい事もあるのかもしれないけれど克服できないものなのかな。

 帰りに再び受付に寄ってありがとうございますと言った。さっきの男の人は見当たらなかった。外は雨のままだ。建物を遠くから振り返って見る。雨にけぶってなのか、ちょっと淋しげな感じがした。

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